北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

2013-01-01から1年間の記事一覧

小さな策士

近所に住む幼稚園児のリャンリャン(仮名)は、時々「お気に入り」を私に見せてくれる。たいていはどこかからもらってきた「お古」だったりするけど、子供のいない私には新鮮。ある日、リャンリャンはいろんな絵柄の横にそれぞれボタンが並んだ英語学習用マ…

胡同はやっぱり「森」だった

常々、歴史ある胡同はどこか森のようだ、と感じていて、近々発売されるはずの文集の中でも、「胡同の夜明けは森林の夜明けのようだ」という意味の言葉を書いたのだけれど、これまでそれはどこか直感に近いものだった。でも、今回、藤森照信氏のインタビュー…

相棒のいない間に……

ちょっと一息つける時期を経て、仕事はまた缶詰期間に突入。新しい壁ごえサービスに入ったので、ネットで見られる情報が多くなったのはありがたい。今度のサービスは相棒と二人で一本なので、ネットサーフィンできる時間は基本的に1/2なのだけれど、今は「…

artscape FOCUS 8月1日号

裸で走ることは中国語で「裸奔(ルオベン)」。 今年の春、窅檳源(リー・ビンユアン)によって、ネット上でふたたび盛り上がった言葉です。アーティストが夜の街を裸で駆け抜ける、というなんだか印象に残る事件だったので、 そんな彼の「行為」をイントロ…

八大胡同の諸相

前々から気になっていながら、なかなか手がつけられずにいたテーマ、それは北京の色町について。 ほんとうに奥が深いので、極めることなど、もとから無理ですが、今回、私なりにある程度まとめてみました。http://www.shukousha.com/column/tada/2344/東京で…

「私のかわいそうなマラート」

明日28日が最終日なので、ざっとですが、友人が監督を務めたお芝居「私のかわいそうなマラート」のご紹介です。若手の演劇関係者にありがちな「無理な背伸び」がなく、でも青臭くもない。分かりやすい内容なのに、脚本選びや舞台美術、演出にはそれぞれ、か…

味噌汁の具

同じ海外に住んでいる人でも、夫婦ともに日本人だとこういうことはないのかもしれないが、 我が家のように国際結婚だと、どうしても日々の食卓から日本食がフェイドアウト。それでも滞在が数年なら構わないが、うちのように十年を超えると、努力して日本食を…

集広舎コラム「歴史を変えた妓女、賽金花と小鳳仙」および「昆虫」

ここ最近、ずっとブログが開けなかったので、今、ほんとうに嬉しい。理由は不明。 数日前など、絶望のあまり、中国語のブログさえ開設してしまった。http://blog.sina.com.cn/u/2779819933せっかく中国にいるので、こちらもたまに更新しようと思う。 写真を…

チェコ映画、「Alois Nebel」と意外な幕間

先日、チェコ映画祭で、どうしても観ておきたい映画があったので、ある小劇場に行った。だが、行ってみると、上映されるのは劇場ではなく、その横の喫茶店内にあるサロン的スペース。椅子も7つくらいしか並んでいない。四合院を改造したこじんまりとしたア…

家が幼稚園に大変身!

近所の人のことをネタにするのはあまり良くないと思い、避けてはいるのだが、 実は私の隣人たちは個性豊かな面々。ちょっとした小社会だ。ある日、蚊除けの暖簾をくぐって、近所の子が遊びに来た。 さあ、遊ぼう、といっても、我が家には彼女が遊べそうなの…

人生初の弾き語り

実は去年の秋あたりから、周囲が完全にベビーラッシュ。 今年の3月まで、冗談でなく、ほぼ毎月、周囲で赤ちゃんが生まれていた。それにしても、赤ちゃんってほんとうによく育つ。ちょっと見ない間に、サイズが二倍近くになっていたりする。自分がもし半年後…

日中で昆劇交流

このサイト、現在中国では開けなくなってしまったようなのですが、 連載コラム「北京の胡同から」に拙文が掲載されましたので、お知らせします。 5月5日に行われた、日本昆劇之友社と北方昆曲劇院の共同公演に関する記事です。http://www.shukousha.com/colu…

70年のよしみin胡同

やった、開けた!数日ぶりのマイ・ブログ訪問。少し前、ある記事で「公開されている」とされていた四合院を訪ねてみた。 個人の住居だったので、そもそも「本当かな?」と半信半疑だったけれど、行ってみたら、案の定、門が固く閉ざされていて、「見るなら、…

胡同と野上弥生子氏

ここ数日、自分のブログが開けなくなって困った。今日も昼は開けなかった。 土日月はネットワークが交通渋滞になるんだろうか?***昨日、何気なく別の胡同の歴史を調べていたら、 ひょっこり自分の住んでいる胡同にまつわる記事が出てきた。 中国の有名な…

胡向前と洪浩の展覧会 断片から見えるもの

少し前の展覧会になってしまいましたが、中国ではいずれもかなり有名なアーティストである、胡向前と洪浩の展覧会を「断片」をキーワードに紹介してみました。http://www.shukousha.com/column/tada/2248/ネットが織りなす「断片」の世界を浮遊する毎日だと…

「お忍び」でも何でもない東京行き

しばらく、予告なしにブログをお休みしてしまい、ごめんなさい。実は帰省を兼ねて、日本に8日間ほど出張に行っていました。いつも慌ただしい日本滞在ですが、今回も例にもれず、息をつくひまもないほど。とりわけ東京では一日に5本ほどアポをこなす日々。杖…

「かわいい」の差

先日、ロシア街「雅宝路」の角にあるスーパーで、こんなチョコレートのシリーズを発見。 あ、「かわいい!」と言って、つい買い物かごへ。すると横で相棒が、 「ええ、この顔、怖いよ〜『恐怖(コンブー)』だ」 と言う。確かにちょっとリアルだけど、やっぱ…

マルチチュード芸術賞

この時間に言ってもちょっと遅いんですが、今日の朝日新聞の夕刊「海外通信」欄に、マルチチュード芸術賞をめぐる拙文が掲載されているかと思います。アジア全域を範囲とした初の芸術賞という、面白い試みについてです。ご興味があれば、ぜひご覧下さい。補…

デトロイトとロボコップ

子供の頃過ごしたデトロイトのことを回想する文章を書いていたら、 ちょうどテレビで、デトロイトが舞台の映画、「ロボコップ」を流していた。最後まで見られなかったけれど、面白さは十分伝わってきた。1988年に公開された「ロボコップ」は、近未来の2010年…

民国期のブロードウェイ、香廠路

民国期の北京でも、政府と民間が一緒になって、西洋近代化の都市計画が進められた時期があったこと、実はあまり知られていないかと思います。そこで、集広舎のコラムで、その現在の名残を追ってみました。http://www.shukousha.com/column/tada/2199/北京の…

ラサの心痛む状況

この春から外国人の入境制限が緩和されていると聞いていたチベット、 でも、前門のプロジェクトと鼓楼のプロジェクトで目にした悪夢が、今、ラサで展開されようとしているようです。チベットの建築文化の保護に取り組んでこられたTHFの平子さんからの情報…

四合院の古樹のゆくえ

北京では、先週末、中国(北京)国際園林博覧会が始まったこともあり、緑に関する話題が盛り上がっている。 実は現在、連載をさせてもらっているNHK「まいにち中国語」ラジオテキストの口絵写真&コラムもテーマは「みどりの中国」。この発売されたばかり…

キョンシー改めゾンビ

先回のブログで、近所の子供(幼稚園児)が「キョンシー」を知っているので驚いた、と書いたんだけれど、 今日、その謎が解けた。どうも、最近流行りのiPhoneゲーム 「プラントVS.ゾンビ」 の中国語訳が「植物大戦僵屍」らしいのだ。http://baike.baidu.com/…

新たな別名はキョンシー

先日、家の門を出た時のこと。 会うたびに言葉をかわす、仲のいい近所の女の子が、私を見てあろうことか、「あ、キョンシーだ、キョンシー、キョンシー!」知らぬ間にあだ名がついたらしい。でも、キョンシーなんてよく知っているな。ま、確かに日本人は鬼(…

「老北京網」ガンバレ!

北京の街並みの取り壊し問題を、もっと大々的に論じることが可能だった北京オリンピック前の時期、多くのファンを獲得していた北京文化情報総合サイト「老北京網」。他のいくつかのサイトが閉じられた中、最後まで頑張っていた頼もしいサイトだったのですが…

私は怪しい者ではない、と言う人ほど怪しいとはいうが

私の仕事は物書き、つまりフリーライターだ。でも最近、私を買ってくれていた編集者の辞任によって北京の雑誌の連載をやめたせいか、周囲から「あなたって何者?」扱いになりかけていることにふと気付いた。 実は日本の媒体に書き続けながら、まとまった文章…

二つの脱出劇 in 広州

どうも鉄条網が張られてしまったようで、ここずっとかべごえができない。仕事に集中できるのはいいが、やっぱり井戸に落ちたカエルの気分。つい折り紙でカエルを作ってしまう。先日、交差点を渡っていたら、目と鼻の先、それこそ2メートルくらい前で、二台の…

うつむいてばかりじゃダメなんだが マカオ編

一日半しか滞在しなかった、年末のマカオ。 宿が高すぎてとても予約は不可。すでに夜だったので、野宿を覚悟しつつ、伝説のカジノ、旧リスボアへ。あたりはネオンきらめく夜の街。目までエレクトリックにチカチカ。 一応、「娯楽場」と表記されているが、「…

うつむいてばかりじゃダメなんだが 蘇州編

ちょっと12月の旅行の回想を。ほぼ20年ぶりの蘇州。蘇州といえば庭園!ということで張り切って庭園巡り。20年前はまだ言葉さえおぼつかない学生。しかも雅やかな世界はまったく似合わないビンボーバックパッカーだったのですが、拙政園の美しさだけは強烈に…

CHPの何戍中さんを取材

これまで私も、いろいろな形で活動を応援してきた「北京文化遺産保護センター」。北京にオフィスを構える、文化財保護を目的としたNGO団体で、最初は未熟なところも目立ちましたが、ほんとうによく頑張っていて、はやその合法NGOとしての歴史も10年。…